なぜアーティストがサイトを持つ時代になったのか

アーティスト公式サイトは、昔からあった。

レーベルが作っていた。ディスコグラフィがあり、プロフィールがあり、ツアー日程が載っていた。 アーティストが自分で触ることはなかった。
それが、要らなくなった。 そしていま、一周回ってまた要ると言われている。(三周目かもしれない)

その間に何があったのか。順番に見ていく。

2001年、iPodが出た。

音楽が、器から外れた。

2003年にiTunes Music Storeが始まり、アルバムは曲単位で買われるようになる。 CDの売上が下がり始めた。
同じ2003年、MySpaceができた。 アーティストが、自分のページを持てるようになった。曲が置けた。ファンと直接やりとりできた。
今を想うとSNS時代の幕開けでもあった。

公式サイトが要らなくなったのは、このあたりからだと思う。 レーベルに作ってもらう必要が、なくなった。

2004年、Facebook。2010年、Instagram。

突如、MySpaceは消えた。(さよならTom)

置き換わっただけで、構造は同じである。 アーティストが自分で発信し、ファンが直接見る。サイトの役割は、そこに吸収された。

2008年、Spotify。

売上が、再生回数になった。

フィジカルを売る商売から、聴かれる回数を積む商売へ。 日本にSpotifyが来たのは2016年で、ここは少し遅い。
このあたりで、レーベルとアーティストの契約条件も変わっていく。 配信は、自分でできるようになった。ディストリビューターに入稿すれば、世界中で聴けるようになる。

ゲートキーパーがいなくなった。 代わりに、レーベルがやっていた仕事が、全部アーティスト本人に降りてきた。

そして、戻ってきたものがある。

LP(アナログの逆襲)。

2020年、アメリカでレコードの売上金額がCDを超えた。1986年以来である。 2022年には枚数でも超えた。
音質のために戻ってきたのではない。 そもそも、買っても聴かない人がいる。持つために買っている。

レコードについては、まだまだ話せるので後々に。

ライブ。

かつては音源を売るための宣伝だった。 いまは、ここが本体である。
その夜、その会場にいたということ。 そしてそれを、誰かと共有できるということ。

グッズ。

再生回数では食えない。だから物を売る。 ShopifyとSpotifyがつながり、聴いている場所でマーチ(グッズ)が買えるようになった。
着ることが、応援していると示すことになる。

戻ってきた理由が、全部違う。

LPも、ライブも、グッズも、昔からあった。 一度、脇に追いやられて、また戻ってきた。

ただし、戻ってきた理由が違う。
音源を手に入れるためではない。 推すためであり、リアルな体験を共有するためである。

モノが欲しいのではなく、関係が欲しい。 そういう話になった。

そこにAIが来た。

そして、サイトも戻ってきた。(かもしれない。)

これも、理由が違う。

昔のサイトは、人に見せる場所だった。 いまのサイトは、AIが読みに来る場所である。
同じ形をしていて、読む相手が変わった。

そしてもうひとつ。推す人は、深く知りたがる。
誰が参加しているのか。いつ出たのか。どこのレーベルか。前に何をやっていたのか。 掘れる場所がないと、掘りようがない。

SNSの投稿は流れていく。中継ページには、同じ構造のものが何百万とある。 どちらも、掘られるようには作られていない。

集約する場所が要る。

音楽配信、SNS、公演情報、バイオグラフィ、ディスコグラフィ、動画、問い合わせ。
散らばったものを、ひとつの場所にまとめる。 ここに書いてあることが一次情報で、他はすべてその先にある、という状態をつくる。

フォロワー何万人や、売上ランキング1位を獲得する話ではない。
アーティスト本人だと、AIが識別できるようにしておきましょう。

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アーティストのサイトは、誰が作っているのか